やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

『がらくた少女と人喰い煙突』無料キャンペーンを終えて

『がらくた少女と人喰い煙突』の無料キャンペーンを始めるに当たって、キャンペーンを行うことでどんな利点があるかについて、自分も事前にそれなりに考えた。
ネットやKindleダイレクトパブリッシングについて書かれた本によると、無料キャンペーン中は間違いなくダウンロード数が伸びるが、終わると全く売れない状態に戻っただけだった、などのネガティブな意見もあったし、キャンペーンをしたことで作品が認知され、ネットで話題になったりしたことで前より売れるようになった、という体験談もあった。
自分の場合、作品を売って利益を得ることも大事だが、それ以上に「あまりに誰にも読んでもらえなくて泣きそう」という無料キャンペーンをしなければならない切羽詰まった理由があり、特に先のことまでは考えずにキャンペーンを行うことに決めたのだが、キャンペーンを終えてみると、「やって良かった」と思える点が多かった。それらについてまとめておきたい。

1.『がらくた少女と人喰い煙突』が781人の人の手に渡った

5日間の無料キャンペーン中のダウンロード数の合計は781で、実用書的な本やコミックなど、多くの人に読まれるタイプの本に比べれば少ない方だと思うが、ミステリーという絞られたジャンルの中では頑張った方なのではないかと思う。無料Kindle本のミステリーのカテゴリーで1位になれたのも嬉しかった。

2.Amazonのレビューが増えたりブログに感想をもらえた

本業である漫画原作の仕事でも、滅多に感想をもらえることがない不人気な作家なので、これは本当にありがたかった。
現在連載中の「あいの結婚相談所」については、いつも感想をくれるのは実の父とたった一人のファンの方(一度ご自分でファンだと言ってくださったのでファンだと決め込んでいます)だけなので、これだけ感想が見当たらないということは他にはもう誰も読んでないのだろうと、いつも泣きそうな気持ちでエゴサーチしているのである。
感想を言ってくれる人がいる=確実に読者がいると信じられることは、自分の書く力に直結しているので、今後もどうか気軽に感想を発信していただきたいです。ブログにコメントをつけたり、リプライをくれたり、レビューを書いたりしなくても、毎日病的にエゴサーチしているのであなたの感想を確実に見つけます。もちろん直接に感想を伝えてくれる(そしてAmazonにレビューをつけていただける)方が、テンションは上がりますが。

3.なぜだか分からないけど無料キャンペーンが終わったあとも売れている

無料キャンペーンが終わり、それほどこの作品が話題になったという気はしないのだが、なぜか無料キャンペーンが終わったその日、そして次の日も、それまでずっと売れ数ゼロだったのに、ぽつぽつと買っていただけている。
そのおかげか、キャンペーンが終わったあとも有料Kindle本のミステリーのカテゴリーでたまに100位以内に入っていたりと、とにかく100位に近いところをキープしているのだ。今のところ。
※10/9追記
その後、『KDP情報局』様のランキングに入れていただいたおかげでさらに売れたらしく、今日はAmazonKindle版ミステリーのランキングで57位になっていました。
http://kdp.url.ph/cakephp/ranking?sorttype=sales&genre=novel

無料キャンペーンでたくさんダウンロードをされると、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のところに作品が表示されるようになって人の目に触れる機会が増える、と聞いたが、そのせいだろうか。しかし自分が確認したところでは、『がらくた少女…』のAmazonページの「この商品を買った人は…」に表示されている作品をクリックしても、その作品の「この商品を買った人は…」に『がらくた少女…』は特に表示されていないようで、どうして売れているのか、ただただ不思議である。
この《ぽつぽつ売れる》状況が少しでも長く続くといいなと思いつつ、一応、『がらくた少女と人喰い煙突』の販促活動について、やれることは大体やったと思うので、今後はこのブログも平常運転に戻って、日々のことや仕事の事を書いていこうと思う。

最後に一点だけ。

Kindleで読める環境にないけれども自分がどうしても読んで欲しい方がいて、その方と自分のためということで、3冊だけ紙バージョンの『がらくた少女と人喰い煙突』を作った。

http://www.seichoku.com/
↑こちらの『製本直送.com』さんにお願いしたのだが、日曜日の夜に注文したら火曜日の朝に届くという驚くべき仕事の速さだった。仕上がりも満足な出来だが、やはりこういう形のあるものとして手にすると、きちんと出版社から《本》としてこの作品を出してやりたかった、とも思う。
先のブログに書いたような理由(http://d.hatena.ne.jp/ieyagi/20151003/p1)から、難しいとは思いますが、もしもこの『がらくた少女と人喰い煙突』を本にしてやってもいいよ、という懐の広い出版社さんがおられましたら、どうかご連絡ください。