取り返しがつかない

漫画原作者で作家の矢樹純のブログ

『バカレイドッグス』最終話


本日発売のヤングマガジン25号に「バカレイドッグス」最終話となる第27話が掲載されました。これまで読んでくださった方に、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。
このブログを書く前に、《バカレイドッグス》の作品名でエゴサーチをして、読者の方の「終わってしまって残念」という趣旨のツイートをいくつか見つけました。もっと作品を読みたかった方には、自分の力不足のために連載が終わってしまったことを申し訳なく思います。また、連載が打ち切りとなったために、1巻、2巻ともに単行本が手に入りにくい状態で、ご迷惑をおかけしてすみません。

バカレイドッグス(1) (ヤングマガジンコミックス)

バカレイドッグス(1) (ヤングマガジンコミックス)

バカレイドッグス(2) (ヤングマガジンコミックス)

バカレイドッグス(2) (ヤングマガジンコミックス)

作者である自分も、もっと書きたいお話がありましたし、連載が続いていたら、最終エピソードはかなり違った内容になっていたと思います。ただ、物語のラストだけは、自分が思い描いていたものに近づけるよう、努力しました。読んだ方の心を打つ最終話となるよう祈っております。
ところで、自分は「出版社の方とのやり取りを相手の了承を得ずにブログに書いて怒られる」ということを何度かやらかしている作家なのですが、漫画や小説を読むことが好きな方に伝えたいことなので、今回も書きます。
雑誌によって基準は違うと思いますが、新人の作家さんや、自分のように売れない実績のある作家の連載は、単行本第1巻の発売から1週間の売れ行きが悪ければ打ち切りとなる可能性があります。『バカレイドッグス』の場合は、発売の10日後の打ち合わせで、打ち切りが決まったと伝えられました。これまでもいくつか本を出してきたので、「単行本は初速が重要」ということは分かっていましたが、ここまで厳しい状況だとは知りませんでした。知っていたなら、もっとなりふり構わず宣伝をしたり、発売前から書店さん回りをしていたと思います。そういう努力が実を結んだかは分かりませんが、今はそうしなかったことを後悔しています。
自分は正直、「『バカレイドッグス』1巻は売れる」と思っていました。青木先生の描いてくださったカバーが素敵だったこともありますが、発売前の打ち合わせで、「販売の方で試し読み冊子を作ってくれた」と聞いたからです。自分の作品に試し読み冊子がついたのは初めてで、「そうまでして売ろうとしてくれているんだから、きっと売れる」と心強く思いました。
しかし、単行本が発売されてから横浜と東京のいくつかの大きな書店を回りましたが、試し読み冊子を置いてくれているお店は一店舗もありませんでした。そしてどのお店でも、『バカレイドッグス』は素敵なカバーが見えない《棚差し》の状態で置かれていました。新刊のコーナーでカバーを見せて平積みされているのは、すでに人気の高い作品や、売れている作家さんの作品だけでした。
現在、漫画も小説も、新刊点数が右肩上がりで伸びていると何かの記事で読みました。そんな新刊が溢れている状況で、書店さんが限られたスペースの中で利益を出すために、「このマンガがすごい!」などのランキングに入っている作品、SNS等で話題になっている作品、映像化された作品などの《売れる作品》を重点的に売ろうとするのは当たり前だと思います。
そうなると《売れる作品》以外の作品は、ほぼ勝ち目がありません。お金をかけて試し読み冊子を作っても、置いてもらえないのです。作品が売れるかどうかは、「ランキング入り」、「SNSで話題になる」、「映像化される」といった、幸運に頼ることになります。「面白い作品にする」という努力だけでは、《売れる作品》にはなれないようです。実際、売れていないけれど面白いと思う作品は、たくさんあります。
自分は、今回の連載打ち切りの経験から、面白いと思う作品や応援したい作家さんの作品は、発売前から予約するか、発売当日に書店で買うようになりました。連載が続くためには、単行本が発売1週間以内にある程度売れることが条件だと分かったからです。売れない作品であっても、せめて連載が打ち切りにならなければ、続きを読むことができます。
もしも皆さんにとって《まだ終わって欲しくない作品》や、《好みの作家さんの作品》があれば、発売前に予約するか、なるべく発売直後に買ってあげてください。漫画の連載や小説のシリーズが続くかどうかは、単行本の売れ行きの初速で決まります。連載が打ち切りになってしまうと、その負の実績のために、作家は次の連載を起ち上げることが難しくなります。そして個人差はあるでしょうが、作家によっては自信を失い、また作品を世に出そうという意欲が湧かなくなってしまうかもしれません。
たくさんの《売れない作品》の中に埋もれて、たくさんの作家が消費されて消えて行き、新刊を出すために、またたくさんの作家が生産されるサイクルの中で、せめて《面白い作品》が残って、たくさんの人を楽しませることができるようになって欲しいと願っています。そして自分も、たくさんの人に楽しんでもらえる作品を世に出していけるよう、面白いお話を書く努力を続けていくつもりです。
現在は、次の漫画連載の準備をしつつ、漫画原作とも小説とも違う、新しいジャンルの作品にも挑戦しております。どちらが先になるか分かりませんが、早く次の作品をお届けできるよう頑張りますので、読者の皆さま、今しばらくお待ちください。

※9/5追記

「『バカレイドッグス』の続編を読みたい」と、ブログにコメントをくださる方がおられます。大変嬉しいお言葉ですが、残念ながら作家にはそれを決める権限がありません。
そういったご要望は、ヤングマガジン編集部宛てに送ってくださった方が、いくらかでも続編を書ける可能性に繋がると思います。どうかご理解ください。