やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

『マザー・マーダー』細谷正充賞を受賞しました

昨年末に光文社から発売された連作短篇ミステリ『マザー・マーダー』が第五回細谷正充賞を受賞しました。

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細谷正充賞は、書評家の細谷正充さんがその年に発売された新刊から、ジャンルを問わず優れた5作品を選出する賞です。

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『マザー・マーダー』は自分にとって、デビュー9年目にして初めての連載作品であり、初めて挑戦した連作短篇であり、そして初めて四六判の単行本として出版された、とても思い入れのある作品です。
受賞が叶わず文庫でデビューし、そのデビュー作が売れずに何年も次作が出せなかった自分は、この作品でやっと、きちんと受賞してデビューした作家の方々と同じスタートラインに立つことができたと思えました。

そうして出版された『マザー・マーダー』は、とてもありがたいことに、新聞や雑誌の書評で取り上げていただいたり、さらには『ダ・ヴィンチ』の《今月のプラチナ本》に選んでいただいたりと、様々なところでご紹介いただきました。

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ですが自分のように知名度の低い作家の作品は、それでも手に取ってもらうことが難しいようで、なかなか売れ数には繋がりませんでした。
『マザー・マーダー』は間違いなく面白い、自信を持っておすすめできるミステリですが、実は現時点では、それほど多くの方に読んでいただけていないのです。

発売からすでに10か月が経とうとしており、もう書店さんの棚からも消えているのだろうと諦めかけていたタイミングでの細谷正充賞の受賞は、本当に嬉しく、報われた思いでした。

『マザー・マーダー』の連載中には、作品を書くこと以外に作家として苦難を味わうトラブルに見舞われ、担当エージェントの栂井理恵さんをはじめ、たくさんの方に支えていただきました。
また選評で評価していただいた各作品の方向性の違いは、担当編集の吉田晃子さんに短篇集の中でそれぞれ変化をつけるようにとアドバイスいただいたおかげです。

多くの皆さまの力に助けられて、このたびの受賞に繋がったのだと、心から感謝しています。その方々に恩をお返しするためにも、『マザー・マーダー』が、さらにたくさんの方に読んでいただけることを願っております。

どうか皆さま、よろしくお願いいたします。