矢樹純の最新作となるホラーミステリー短編集『血腐れ』が本日、新潮文庫にて発売となりました。
新潮文庫では2冊目から背の色を選ぶことができるのですが、迷わずタイトルにぴったりの赤を選択しました。想像以上に目を惹く仕上がりです。
新潮社の作品ページに第一話の「魂疫」が丸ごと読める試し読みをご用意いただいております。こちら、カバーの不穏さに負けない凝ったデザインで大変素敵ですので、ぜひ読んでいただければと思います。
こちらの『血腐れ』は2021年から2024年にかけて『小説新潮』に掲載いただいた6つの短編をまとめたものです。
2021年は作家として、とても苦しい出来事に遭遇した年で、ちょうど第一話を書いた時は、その最中にいました。文章を綴ることが難しいほどの状況でしたが、担当編集の方をはじめ多くの方に励ましていただき、どうにか乗り越えて書き上げることができました。
そこから始まったシリーズを一冊にまとめることができて、本当に感慨深い気持ちです。
夫の一周忌に義理の妹から《兄さんの幽霊》がしょっちゅう枕元に現れると告げられ困惑する「魂疫」
弟親子に付き合って参加した家族キャンプ。《血の儀式》が伝わる縁切り神社で何が起きたのかと疑心に駆られる「血腐れ」
父親の介護を通して《地獄に落ちる》ことの意味を知る「骨煤」
妹に頼まれてネット通販で買った不気味なネイルチップが様々なトラブルを巻き起こす「爪穢し」
祖父が住職を務める山寺の巨大な《鐘》には奇妙な言い伝えの謎を解く「声失せ」
原因不明の発熱で入院中の幼い息子にまとわりつく黒い影の正体を探る「影祓え」
どのお話も読み味は違いますが、主人公たちは不穏な空気をまとう日常からある瞬間に足を踏み外し、恐怖に叩き込まれます。それらの不条理な世界には何かしらの《法則》があり、事態の解決のためにはその謎を解かなくてはならない――というサスペンス要素入りのホラーミステリーとなっております。
解説は杉江松恋さんが引き受けてくださりました。それぞれの作品について丁寧に紹介していただいた上にミステリーの勉強にもなる素晴らしい解説で(また文章が美しくカッコいいのです)、何度も読み返しております。ミステリーを書かれる方、好きな方にはぜひ、じっくり目を通していただきたいです。
自分にとって、様々な思いのこもった作品です。多くの方に手に取っていただけることを願っています。