やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

新杉田へ落語を聴きに

7時半起床。晴れ。朝食のあとゴミ捨てて洗濯して上の子達の上履きを洗う。風呂の掃除や部屋の片付けなどしてから、牛人間に子供達の面倒を見て貰って10時半頃家を出て電車で新杉田へ。昨日のブログにも書いたが、今日は新杉田杉田劇場に『快楽亭ブラック毒演会』を聴きに行くのである。
昼食は駅ビルの蕎麦屋で済ませた。時間があったのでドトールでアイスコーヒー飲みながら『本格ミステリーワールド 2010』を読む。13時過ぎに杉田劇場に向かい、受付を済ませてパンフレットを読みながら開演を待っていたのだが、なぜか普段着姿の快楽亭ブラック本人が受付の周りをウロウロしていて、気になってパンフレットを読むどころではなかった。
ところで、突然の告白だが自分は以前、あまり落語が好きではなかった。と言うか嫌いだった。
実は自分は落語を含む江戸文化が大嫌いで、子供の頃などは笑点の落語家達の江戸弁を聞くとイライラしてしょうがなかった。それは自分が青森に住む田舎者で、江戸っ子と呼ばれる人達は何となく「田舎者を馬鹿にしている」と感じたからだ。屈折した田舎者の自分にとって田舎を馬鹿にする人達は敵で、落語家なんかより伊奈かっぺいが上だと考えていた(実際、当時の伊奈かっぺいのライブはメチャメチャ面白かった)。
江戸っ子に対する僻みの気持ちが弱まって「落語を聴いてみよう」と思えるようになったのは、ここ数年のことだ。飛行機に乗った時に機内ラジオで聴きたい曲が無く、試しに落語の番組を聴いてみたらとても面白かったのだ。それから、テレビなどでちょこちょこ落語を聴いたりするようになった。で、去年の冬についに寄席デビューを果たしhttp://d.hatena.ne.jp/ieyagi/20091128、落語は生で聴いた方がより楽しいということも分かった。それで先日牛人間が入手したデータで聴いた落語が大変に好みで面白かったので、今日の『快楽亭ブラック毒演会』に来ることを決めたのである。
開演時間となり、席に着いて間もなくさっきは普段着だった人が羽織を着て舞台の上に現れた。まずは地獄に落ちた石川五右衛門善光寺に“血脈の印”を盗みに行かされる話。これは多分普通の落語だと思うのだが、石川五右衛門が「月経かな」と言うあたりは絶対に普通じゃないだろう。しかし面白い。
その話が終わると演者の名前が『快楽亭ブラック』から『元気いいぞう』に替わり、アロハシャツを着てウクレレを持った中年の男性が現れた。この人のパフォーマンスが物凄く衝撃的で、自分は一度観ただけで完全にファンになってしまった。

ちなみにこういう芸風の方である。
そのあと、休憩を挟んで再び落語。今度のは『一杯のかけそば』のソープバージョンで、これは完全にオリジナルだと思う。とにかく酷い話で面白かった。
終わったあと、元気いいぞうさんのCDを買い、一緒に写真を撮って貰う。

いいぞうさんが「じゃあ師匠を背景に撮りましょう」と言ったのでこんな恐れ多い写真になった。
普通の落語家はそんなことはしないらしいが、このあと客も参加出来る打ち上げがあり、何事にも物怖じしない牛人間が予約の段階で参加の申し込みをしていたので行くことになる。落語の知識も無くコミュニケーションの能力も無い自分はそんな知らない人ばかり(しかもその参加者の中に普通に落語家本人が混ざっている)の場に行くことが不安で直前まで迷っていたのだが、この時は元気いいぞうさんにほとんど一目惚れのような状態で、何とかこの機会にお話を聞いてみたかったので参加を決めた。
打ち上げの場所は杉田劇場の近くの居酒屋で、打ち上げ初参加でオロオロしているうちになぜか自分は快楽亭ブラック師匠の目の前に座らされることになってしまった。
ここでちょっと最初の方の話に戻るが、落語家を敵視していた自分は、テレビに落語家が出た時に自分自身は芸人でも何でもない周囲のタレント達が落語家のことを「○○師匠」と呼ぶのも我慢ならなかった。その人にとっては別に師匠ではないはずなのに、何でそんな白々しい持ち上げ方をするのだろうと感じていた。
だが、こうして目の前に快楽亭ブラック師匠が座り、いざその人に呼び掛けようとした時、自分も「ブラック師匠」と呼ぶ以外無かったのである。白々しいとか生意気なことを言ってすみませんでした。確かにああいう方々は師匠です。そういうオーラが出ていました。
最初は何を話していいか分からず挙動不審に目を泳がせながらビールを飲んでいたのだが、ブラック師匠や常連のお客さん達が話し掛けてくださって、次第にリラックスして色々お話を聞くことが出来た。目当てだったいいぞうさんとも三上寛のことや寺山修二のことなど(自分が青森出身だと伝えたのでそういう話題を選んでくれたのだ。優しい方だった)お話しすることが出来て楽しかった。
ブラック師匠も元気いいぞうさんも、その場にいる人達を楽しませようという気持ちに満ち溢れていて、そういう方々と一緒に過ごせたことは幸せだったし、勉強させて頂いた。また機会があればぜひお二人を観に行きたいのでブラック師匠と元気いいぞうさんの公演スケジュールhttp://kairakuteiblack.blog19.fc2.com/を今後粘着にチェックしようと思う。また、詳しい経緯は省くが元気いいぞうさんがブラック師匠の陰毛を居酒屋の箸袋に入れたものを「これはいつか、本当に困ったことがあった時に開けてください」とおっしゃって持たせてくれたのだが、これについては開ける時が来ないことを祈ろうと思う。
打ち上げは20時くらいにお開きとなり、駅で他の方々にお礼を言って別れて21時半帰宅。牛人間に落語と打ち上げの様子を報告したあと、録画してあった『わが家の歴史』を一緒に観ながらビール飲んで、それからmixiで“元気いいぞうコミュ”を見つけて即入会して1時半就寝。