やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

心が折れる時って、こういう時

6時半起床。小説の模写をして子供達を起こす。朝食はトースト、ウインナー、ヨーグルトとコーヒー。
夫と子供が家を出たあとは「あいの結婚相談所」第34話のシナリオを書き進める。が、新しく入れようとしているネタが上手く活きていない感じがして、もう少しひねった方が良いかと思えてきた。そのための調べものをしたりで、あまり作業自体は進まず。
12時半、午前授業で子供達が帰ってきたので昼食。レトルトのソースを使ったミートソーススパゲッティを食べさせる。その後、シナリオの続き。やっとネタがはまったので、ここからは順調に進んだ。
夕方、ホラーの企画の担当さんから電話がかかってくる。先週、ネームにして渡していた第2話に再び直しの指示がきた。
これついては以前にも書いたが、編集部から話をもらって企画を起ち上げたのが2年前。1話目は10回近く修正を重ねてやってOKが出て、2話目の修正はこれで5回目となる。
前回の打ち合わせで言われたのは「主人公があまり目立たないので、もっと主人公に感情移入させて読者の恐怖を煽って欲しい」ということだった。
今回の話は主人公を含めて4人の主要な登場人物がおり、それぞれの話でストーリーを引っ張っていくキャラを変えていくことでそのキャラを掘り下げる、という展開を考えていた(事前にそういう展開になる旨をプロットで渡して編集長の了承を取っている)。なのでその指摘には「こちらの意図とずれたことを要求されている」と感じながらも、確かに読者が感情移入できることは大切なので、直すことにした。
ストーリーを引っ張るキャラを主人公に変え、さらに主人公自身に恐怖が迫るようなエピソードをつけ加え、前回渡した第2話とは大分違った作りになったが、これで相手方のオーダーにはきちんと応えられたつもりでいた。しかし担当さんは、「ちょっと酷な言い方になりますけど」と前置きをして、「編集長が、前とどこが変わったのか分からないって言ってるんですよ」と告げた。
担当さんの言葉に「分かりました。もう一度直します」と条件反射で答えながらも、頭は全然動いていなかった。あそこまで変えたのに、どこが変わったか分からないと言うのなら、ちゃんと読まれていないのか、あるいは絶望的なまでに自分に力がないということだ。
さらに担当さんは今回の話について、「どうも演出に頼りすぎている気がするんですよね」という指摘をした。
自分はややこしい話を書くことを得意分野としていて、今回の話もホラーでありながら、かなり複雑なプロットになっている。だからこそ丁寧にホラーの演出をして、理屈っぽくならないように心がけていた。というか、ホラー漫画で演出を大事にしなくてどうするんだろう。もう何もかもがずれている、噛み合っていない、と思った。この企画はもう無理だ、という確信がした。
担当さんとの話が終わったあと、作画の加藤山羊と打ち合わせをする。「ここまでやってきたのだから」という思いもあるが「ここまでやってこの状態」という現実に、足が進まなくなっている。「とりあえず、直すと言ってしまったんだから直そう」という結論になったが、自分の中ではもう、直せる気がしなかった。
酷い気分で夕食の支度をする。鶏肉とキャベツの味噌炒めと茹でブロッコリーを食べて、子供達と柔道の稽古へ。子供達はいつも通り稽古を頑張っていたが、自分は途中から保護者の話し合いに参加しなければならず、乱取りの途中で抜けたので何だか不完全燃焼に終わった。
いつもなら稽古で体を動かせば仕事のストレスを忘れられるのだが、今日は帰宅して風呂に入って子供を寝せてビールを飲み始めても、ずっと鬱々としていた。
プライムビデオでお笑い番組を観て無理に笑ってみたが、すぐに辛くなってやめた。0時過ぎにベッドに入ってから、自分がとても無価値な人間だと思えて、ただ悲しく、遠くに行きたかった。