やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

『フェンス』

TSUTAYAディスカスで借りた『フェンス』という映画を観た。デンゼル・ワシントンが監督・主演の、《甘くない》家族のドラマを描いた映画である。
1950年代のピッツバーグが舞台で、そこに暮らす黒人家族と父親の友人が主な登場人物となっている。元は舞台劇だったそうで、基本的に家とフェンス(映画の中で父親が造ることになる)に囲われた庭の中でストーリーが進行していく。
父親であるデンゼル・ワシントンは、昔の父親らしく家族を支配している。父親として強い存在であり続け、責任を果たそうとするものの、彼の行動により、家族はフェンスの外へ追いやられたり、またフェンスの中にいながらも、家族として愛情を保てなくなっていく。
家族を守ろうとした父親の意志の象徴が《フェンス》なのだと思うが、家族は父親を含め、一人一人が別個の人間だ。一つの家で暮らしながらも、それぞれ欲するものが違い、家族がそれを満たしてくれるわけではない。家族として一緒に生きること、家族を幸せにすることは、決して簡単ではないし、当たり前でもないのだと気づかされた。
家族というものの見方の変わる、とても考えさせられる映画だった。そして考えさせられるだけでなく、胸に残る素晴らしい作品だった。