やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

長い一日

7時、牛人間に起こされる。晴れ。牛人間が「朝のうちに例の土地の日当たりを見てきたら?」と言う。例の土地の南側に建物があったので、どれくらい日が当たるものなのか、と昨日話していたのだ。行って見てきたが、朝早くだとほとんど裏の家の陰になってしまうようだ。だから安いのか。土地の形をメモ用紙に写して来たので、太陽の位置や影がどこまで伸びているかなどメモして来る。
帰宅して牛人間が昨日買って来たスーパーの処分品のパンを食べたあと、メモを参考に息子のお絵かき用に取ってあった先月のカレンダーの紙を切ったり折ったりして日の当たり具合を検証し、どんな間取りが良いかと話し合う。3階建てにして、2階をリビング、3階を子供部屋にし、リビングから子供部屋に吹き抜けを作る。そして吹き抜け部分に窓を細長く入れたらどうか、などと嬉々として話し合っていた。元々は中古物件をリフォームして住むはずだったのに、3階建てなんか絶対予算オーバーなのに、この時の自分達はあまり正気ではなかったと思う。
牛人間が10時頃、息子連れて散歩がてらまた土地を見に行ったので、その間に掃除機かけたり風呂掃除したり授乳したりする。11時少し前に家を出て歯医者へ。一番酷い虫歯の治療が今日で終わり、残り虫歯は2本になった。こっちは深い虫歯ではないのでそんなに痛い思いはしないだろう。レントゲン撮ってもらい、薬局でカビキラー、入浴剤など買って行く。昼食はカップ焼きそば。牛人間と息子はインスタントラーメンを食べたとのこと。
昼前に牛人間の弟からニンテンドーDSが届いた。牛人間が『えいご漬け』をやるために、弟が使わなくなったのを送って貰ったらしい。ニンテンドーDSライトを買うつもりで事前にソフトだけ買っていたのだが、ライトがどこに行っても売り切れで手に入らなかったのだ。さっそく『えいご漬け』の英語力判定をしてみたが、自分はEで牛人間はAAAだった。牛人間はそう言えば仕事で英語を使っているのである。自分だって仕事で英語を使うこともあるが、この間書いたシナリオに“done”という単語を使い、それを「ドーン」と発音していたのを「“ダン”って読むんだよ」と野良ヤギに教えて貰った。
1時にNさんが迎えに来る。今日はたくさんの物件を案内して貰った。不動産屋は「出来たら今日で決めて欲しい」と気合を入れて物件を取り揃えて来たようだ。頼んだのは予算3000万円で中古・土地(リフォーム代や家の建築費を入れても予算に収まるような価格で)・新築である。以下が今日見た物件。

  • 古家付きの狭い土地。家を取り壊すのに100万円くらい掛かるらしい
  • 6DKの昭和45年築の新幹線の線路の上に建っている収納(特に本棚。廊下の壁一面が文庫本サイズの本棚だったりする)が異常にいっぱいある傾いた家。物を捨てられないタイプの本好きが暮らしていたのだろう。自分としてはちょっと魅力的に思えたが傾いてるのでこれは買えない
  • 中古で間取りは良くてリフォーム済みだけど、駐車場が無く、隣家が赤紫の壁でドーベルマンを飼っている
  • 広くて安いけど車が入れないだろうという土地(古家付き)
  • 新築で安いがリビングが狭くて変な形で絶対にくつろげない家。3階建て。土地の形が真四角じゃないとこういうのが建つのだ
  • 建っていない家。間取りと造成中の土地だけ見せられた
  • 最後に見せて貰った、これが一番売りたかったと思われる、例によって完全に予算オーバーだけど広くて真四角な建築条件付きの広い土地。建築を請け負う会社は神奈川で3本の指に入る工務店だとか

全部見終わったのは7時。またNさんの会社に連れ込まれ、上司のIさんに数字を出してもらう。「どの物件が気に入ったか」などの質問は一切無く、Iさんは一方的に最後に見せた建築条件付きの土地を「こちらの物件ですと月々の返済額はこれくらいになるので決して無理ではないと思うんですが」と売りつけようとした。どうしてこの不動産屋は客に対してこんなに自分勝手なのだろう。Nさんは良い人なのだが、この時点で自分達は「ここからは何も買いたくない」という気持ちになっていた。
8時前に帰宅。昨日は牛人間の帰りが遅かったので、今日、娘の初節句を祝うことにした。100円じゃない回転寿司屋で持ち帰りの寿司を買って来て食べ、買っておいた雛ケーキを食べる。娘は何も食べられないのだが機嫌良くその食事風景を見ていた。風呂入って娘と息子を寝せてから家について話し合う。
自分達は将来的に牛人間の実家がある岡山に移住することを考えている。なので今買う家はその時点で売るのが前提で、「あと30年くらい住めれば十分」な程度の家を探していた。しかし今日の話し合いで、「自分が育った家が売られた挙句に両親が遠くに移住してしまったら、子供たちは寂しいんじゃないか」と思い始めた。その頃、自分達の子供がどこでどんな生活をしているか分からないが(ヒッピーになって全裸でユーラシア大陸横断をしているかもしれない)、家は売るんじゃなく子供達に残すつもりで、子供達の誰かがその家に住みたいと言ったらその子にあげたらいいし、そうならなかったら売ろう、ということになった。なのでこれから探す家は、造りがしっかりした中古、または新築をターゲットにしていく。予算はプラス500万円が限界だが。2時半過ぎまで話して3時就寝。