やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

騙されていますか?

7時半起床。晴れ。寝たのが遅かった上に娘が夜泣きしたので寝不足だ。朝食は昨日のパンの残りと牛乳。
10時、例の近所の土地を扱う悪徳不動産屋のTさんが迎えに来たのでまずは土地を見に行く。造成の途中なので柔らかい粘土質の土で靴の裏がドロドロになった。息子がよりによってその土の上で転んだ。日当たりについて説明してもらうが、裏の家とある程度離してリビングを2階にするならきちんと日は入るだろう、とのこと。まあ悪徳不動産屋の言うことなど信用出来ないが。
それからすぐ近くのモデルルームを見て、家がどんな仕様になるか、とか、内装について簡単に説明を受ける。立派な家だったがそこは今回の土地を請け負う建築業者のものではない。悪徳不動産屋のTさんは大変早口なので、注意して聞いていなければそれを聞き逃すところだった。そのあと一旦団地の駐車場に戻って自分達の車に乗り換え、今回建築を頼むことになる工務店に行く。
先日買った『買っていい家わるい家。』という本は1級建築士が書いたとても参考になる本で、家の工法や構造や基礎について、どんなものが良くてどんなものがダメなのかがしっかり書いてあった。工務店の説明を聞くまで、価格が安いのだからダメな工法でダメな家を建てるのだろうと考えていたのだが、“ベタ基礎”とか“パッキン”とか、本で良いと言われていた工法が使われているし、結露させないための工夫や白蟻対策も出来ているし、更に住宅保証機構の10年保証も付いているので第三者機関の審査まで入る。これは決して悪い家ではない。普通以上の家だ。工務店の人は「100年住める家を目指している」と言った。まあ悪徳不動産屋と繋がっているダメ工務店が言うことなので嘘に決まっているが。
内装などについてショールームで実物を見ながら細かい説明を聞く。窓ガラスは全て分厚いペアガラスなので断熱・結露防止・防音に優れた家になるだろう。風呂なんか浴室暖房・乾燥機が標準装備だ。これは値段の割りには“良い家”過ぎる。何かおかしいと感じ始めた。そしてTさんと「さあ、どうします?買いますか?」という話になった時、やっと謎が解けた。
Tさんは自分に「3000万円に収められそう」と言ったのだが、全然収まってなかったのである。どういうことかと聞くとTさんは「家の基礎部分のグレードを落とせば予算に収めることも出来ます。でも私はそういう家は出来れば売りたくないのです」と男らしくワガママなことを言った。結局土地の値段を少し値引きして貰えたが、諸経費を入れると500万円近くオーバーだ。しかし、困ったことに自分達は昨日、「あと500万円までなら余計に払ってもいいから長持ちする良い家を買おう」と決断したところだったのだ。何というタイミングだろう。
どうするか決まったら連絡する、ということで帰る。帰宅途中、マックで昼食。家に着いて息子と娘を昼寝させ、さっきの家のことを話し合おうとしたところ、一番最初に物件を案内して貰った不動産屋のKさんから電話が来た。自分達の探していた条件に合う物件が出たらしい。間取りなどを送って貰うとかなり広い4LDKで、3380万円だったのが3080万円に値下げされていた。

近所だったので牛人間が1人で見に行った。実を言えば牛人間も自分もさっきの建築条件付き土地の注文住宅に気持ちが傾いていたのだが、「こっちの中古を無視してそっちに決めたらすっきりしない」ということで自身を納得させるために見に行ったのである。結果、その物件は思った以上に手入れが悪く外から見ただけでも傷んでいて、隣の家の敷地にはスクラップになった車が野ざらしになっていた。長年猫を飼っている家で、家の中も相当なものだそうだ。これでほぼ完全に気持ちが決まった。
家を探し始めてから1ヶ月と経っていないが、金利がどんどん上がろうとしているこの時期、決断が遅れるとローンを組むのが遅れ、たった1週間の違いで200万円とかそれ以上の損をすることになる。そして良い物件はすぐに無くなる。自分達は悪徳不動産屋に騙されて家を買うように追い込まれているのかもしれないが、Tさんに「例の土地を買うことに決めたので他の人に売らないように」と電話を入れた。
土地を買って家を建てることが決まった。



しかしお家に着くまでが遠足であるように、契約書にハンコを押すまでは本当の決定ではない。この4日後、事態は急転するのである。