やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

夢を見ていた

「あの土地を買いたい」と不動産屋に連絡した際、「では次回の申し込みまでに、ざっとで良いので間取りを考えておいて下さい」と言われた。考えておくと言っても、何か紙にでも書いた方が伝わりやすいだろう。とりあえず日当たりを考えて2階をリビングにして、ついでに風呂や洗面所も2階にして、収納は出来る限りたくさん作って、子供部屋は将来人数が増えてもいいように広くして……と要望を書き出しているうちに、こんな狭い敷地の2階建てで、希望通りに家が建つのか?とギモンになってきた。
当日このメモを持って行って工務店の人に「これは無理です」と言われたら考えたのが時間の無駄になってしまう。では実際に間取りを自分で書いて確かめてみよう。最近物件を見て回る度にその家の間取り図を貰って来ていたので、いくらか間取り図の記号とか、必要な広さ(廊下の幅とかトイレのサイズとか)のような基本は分かっているつもりだ。
しかし、実際書いてみると、限られた広さに自分の要望を盛り込みつつ部屋や収納をはめ込んでいくのはかなり頭を使う作業だった。土地の形は長方形なのだがカーポートを作るので家の部分はL字型の敷地になる。これでかなり部屋の置き方が制限されてしまうのだ。ちょっと書いてみようというくらいの気持ちで始めたのに、自分は1300円も払って『本当に暮らしやすい間取り138の条件』などという本を買ってきて、いつの間にか間取り図を書くことに没頭していた。狭い家なので“通路”の占める面積を最少にしなければならない。そのためには階段の形だとか、トイレをどこに置くだとか、色々な要素が関わってくる。パズルのようなものだ。
この時は更にシナリオの直しなどもあって、自分は3日間、寝ている時と子供の面倒を見ている時以外はずっと集中して何かを考えているような状態だった。無事にシナリオの直しが終わり間取り図が完成した時は、抜け殻のようになった頭に多幸感だけが残り、変なテンションだった。多分“洗脳”のメカニズムと同じ状況が起こっていたためだろう。だから翌日、自分は全く平静でいることが出来なかった。