やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

イタリア人を目指して

イタリア人になりたい。

大学生の時、『イル・ポスティーノ』というイタリア映画を観た。
その頃自分は初めての一人暮らしをしていて、実家にいた時から片付けも掃除も嫌いだったのだが一人で暮らしていると誰も注意してくれる人がいないので部屋の中は凄いことになっていた。

本棚の中で野良猫が6匹の子猫を産み猫のトイレの砂が部屋のあちこちに落ちていて、台所では何かが腐っているし床の上は脱いだ服と漫画本とコンビニ弁当の空き容器などのゴミで足の踏み場が無かった。
更に言えば当時付き合っていた恋人の浮気を知り、それを責めたら「二股で良いなら付き合ってあげる」となぜか偉そうに言われ、とにかく自分は何もかもがグチャグチャであった。

そんなダメな人間関係しか築けない自分がゴミ屋敷みたいな部屋で観たイタリアの映画はとても美しく、登場人物たちの生活そのものも美しかった。自分もこんなふうに暮らせたらと思ったが、ゴミ屋敷の住人には無理なことである。

その後、自分は運良く結婚することが出来て、何とか子供まで持つことが出来た。
子供が産まれたあとは部屋をゴミ屋敷にするわけにはいかない。子供はまだ1歳で床に落ちているホコリをつまんで食ったりするので掃除は必須である。ガスレンジの油汚れは1年に数回しか掃除しないし洗面台の鏡は常に曇っていてサッシ窓のレールのところに死んだ虫が挟まったままになっているが、1〜2日に1度、部屋に掃除機をかけることだけは出来るようになった。

一つのことが出来るようになると自信が付くものだ。
このまま頑張れば、もしかして自分もイタリア人になれるのではないだろうか。
そう思い始め、ついに自分はイタリア人になることを決心した。

このブログは売れない漫画原作者イタリア人のような美しい暮らしを目指して努力する日々を記録していく、というコンセプトである。
どうか暖かく見守っていただきたい。