やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

悪徳不動産屋の提案

一昨日Tさんに届けてもらった資料だが、間取りをよく見たら収納が少な過ぎることに気づいた。元々Tさんの会社には不信感を抱いていてあまり付き合いたくなかったので、これは断るのに良い口実だと思い、午前中、公園から帰ったあとに不動産屋に電話してみる。

Tさんに繋がったので物件の案内をキャンセルしたいと告げると、Tさんは「それは構いませんが」と言ったあと、大声の早口で「今お電話しようと思っていたんですが、実は分譲土地でお客様のご予算内に収められそうなものがありまして」と言い出した。

自分達の予算は3000万円と伝えてある。Tさんの扱っている分譲土地は「建築条件付」と言って、Tさんの会社の指定する建築会社で家を建てることを条件に土地を売る、というタイプのものだ。つまりTさんは3000万円で注文住宅が建てられる、と言っているのだ。分譲されていた土地は極端に狭いわけでもなく変な形でもなく場所的にも便利で、Tさんの言っていることは普通はありえない。もう一度「本当に予算内に収まるんですか?」と確認すると「ええ、収められそうです」と微妙に曖昧な返答。とりあえずそのTさんのプランを見せてもらうことにして、日曜日に会う約束をした。

夜、牛人間が帰って来てからTさんの話について検討する。まさか3000万円には収まらないだろうが、それでもかなり値引きをしてくるのではないだろうか。Tさんの会社はこの近所の土地を開発している会社で、地主と繋がっているからそういう交渉が出来るのかもしれない。何より近所だということが自分達にとっては魅力だ。今住んでいる場所は公園、激安スーパー、デパート、本屋、郵便局、保育園、幼稚園、小学校、中学校など自分達が子供を育てつつ生活していくための施設が全て歩いて行ける範囲にあり、家を探しながらも「ここに住み続けられたら一番いいのに」と考えていたのだ。Tさんが売りつけようとしている分譲土地は、ここから徒歩7分の所である

どんな粗悪な家を建てられるのか分からないし、Tさんがどれくらいの値引きをしてくるのかも分からないが、“注文住宅(建築会社が決まっているので建材や工法には制限があるが)が建てられる”・“今のままの生活圏”というのは素晴らしい。自分達は舞い上がり、「もうここを買っちゃおう」と言ってどんな家を建てたいか夢を話し合った。そして牛人間の「雨で濡れて滑ったら危ないから門から玄関までの部分は商店街にあるようなアーケードを付けよう(しかもDIYで)」という提案に対し自分が「そんなセンスの悪いものは必要ない」と言ったことから、建てられるかどうかも分からない家のことで本気のケンカになる。