やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

地主さんという人種

牛人間は学生時代に米屋さんでバイトをしていたのだが、そこの米屋さんのご主人がとても親しみやすく話が面白い人で、帰省の度に挨拶に寄っている(米屋さんは弘前にあり、実家の青森から1時間以内で行ける)。今日訪ねて行った時も、ご主人が総代をしているお寺の池にザリガニが大量発生して蓮が壊滅状態になり、ザリガニ駆除のためにナマズを50匹注文したとか面白い話を聞かせて貰った。
米屋さんの家は広くて古い和風の家で、居間からは家庭菜園をしているという庭が見えるのだが、今日初めてその庭を案内して貰った。自分が思っていた以上にその庭は広く、見えていた範囲以外もずっと敷地が続いており、しかもその中に離れの家があり(自分はそれを隣の家だと思っていた)、ようやくこのお米屋さんがとんでもないお家だな、ということが分かった。そっと牛人間に耳打ちして聞いてみたら、米屋さんは代々田んぼをたくさん所有する地主さんで、農地解放後はその解放してしまった田んぼのお米の精米を請け負って来たそうなのだ。
地主という人種で自分が唯一知っている母の叔父は、親の財産を独り占めしたあげく親戚の集まりにやってきては子供達(自分や野良ヤギ)に「こづかいをやる。拾え」と言って財布の中の小銭を床にばら撒いたりする人間で、自分は地主というものを大分誤解していた。米屋さんのご主人は物凄く面倒見が良くて、人に対して何かをしてあげることを楽しんでいる人である。何しろバイトをしている学生のために毎年手作りの冊子を発行してあげているような人なのだ。
ちなみにその冊子というのは、ほとんど全てのページにハイセンスで卑猥な歌の歌詞(恐らくご主人のオリジナルと思われる)が達筆な字で書かれているだけというもので、何でそんなものをわざわざ作っているのかは分からないのだが、とにかく自分はこの米屋さんのご主人を非常に尊敬しているのである。

弘前からの帰り道にねぷたとすれ違ったので車の中から激写)