やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

事件。そして謎

天気が良ければ海に行くはずだったのだが、曇りだったので牛人間と母と野良ヤギと子供達とでプールに出掛けた。昼食にみんなでラーメンを食べ、そのあと雲谷スキー場(夏はカートで丘下りなどの遊びが出来る)に遊びに行くことになり、母が「じゃあ飲み物を買って行こう」とラーメン屋前の自販機で人数分のジュースを買ってくれたのである。
母がジュースを買っている間に自分は子供達をチャイルドシートに括り付けていたのだが、牛人間が「コーヒー飲みたいんだけど、お母さん買ってくれてるかなあ」と言う。面倒に思いながらも車を降りて母のところへ確認しに行くと、子供用のジュースやスポーツドリンクやお茶しか買っていなかったので、母が買っていた自販機の隣の自販機に金を入れ、牛人間の分のコーヒーを買った。
ところが、その自動販売機は自分の前に買った人が取り出し口に缶ジュースを4本も詰まらせたままにしており(1個ずつ取り出さなかったのであろう)、当然自分が買ったコーヒーも詰まってしまった。自分でどうにかして取ろうとしたのだが無理で、自販機の会社に電話をしていると、自分よりも数段器用な牛人間が来て、奥の缶を順番に上に押し込んで手前のジュースを取り出す、という方法で全ての缶ジュースを出すことが出来た。
自販機の会社の人に「取り出せました」と報告して、車の中で子供が待ち疲れて騒いでいたので慌てて車に戻り、そのまま雲谷へ向かった。そしてカートのチケットを買おうとしたところで、財布が無いことに気付いた。車の中も探したがどこにも無い。さっきの自販機に詰まった缶ジュースを取り出そうとした際、バッグのファスナーをきちんと閉めないまま自販機の前で屈んだりしていたので、多分その時に落としたのだろう。
その自販機のすぐ近くに交番があったので、まずはそこに電話して財布が届いていないか聞いてみたが、届いていなかった。次に自販機を置いているラーメン屋に電話をかけてみたところ、「その財布なら、さっき外を歩いていたおばあさんが拾ったみたいで、お店の中に『財布落とした人居ませんか?』って聞きに来ましたよ。誰も落として無かったから、すぐそこの交番に届けるって言ってました」とのこと。
財布の色や形を聞いたら間違いなく自分の財布で、親切な人が拾ってくれたんだと安堵する。それでもう一度交番に電話してみたのだが、まだ届いていないと言われた。拾った人も何か急ぎの用事があって後回しになっているのかもしれないと、とりあえず牛人間に金を出させて子供達とカートに乗って1時間ほど遊び、その帰りに直接交番に行ったのだが、財布はまだ届いていなかった。落としたのが昼の1時半くらいで、交番に行ったのは5時過ぎのことである。
交番で遺失物の届けを出し、それからラーメン屋にも寄ってさっき電話で話した店員さんに詳しい話を聞く。財布を拾ったおばあさんはどこに住んでいるかは知らないが時々この辺を散歩している人で、ラーメン屋を出たあとは真っ直ぐ交番の方に向かって行ったそうだ。交番までは1本道で50mくらいの距離である。おばあさんに一体何が起きたのであろう。
自分は「おばあさんが財布を届けに行ったらパトロール中で警察官が留守だったのであとで来ることにして帰ってしまった」と推理したのだが、牛人間は「おばあさんが財布の落とし主を探しているのを見て、『それは私の財布です』と嘘を吐いて盗って行ってしまった人がいる」と推理した。どちらの推理が当たっているのか、または全然別の真相なのか分からないが、この日、夜になっても警察から電話は来なかった。