やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

新宿で打ち合わせ

今日は初めて顔を合わせるWEBコミックサイトの編集部の方と打ち合わせをするため、新宿まで行ってきた。乗換案内の時間を入力し間違えていたために、約束の時間の30分前に駅に着くはずが、7分前に着く。駅から徒歩5分のビルだったのでギリギリ間に合った。
2年前の夏、ある出版社からお話をいただいて、単行本一巻分の長編ホラーの企画を起ち上げた。最初に出したプロットを編集長が気に入ってくれて、「これで連載の方向で」と一度はOKが出たのだが、その後、第一話のネームの段階で担当編集者の方と編集長から何度も修正の指示があり、一年以上にわたって十回以上もネームとシナリオを直すことになった。そして最終的に、担当さんから「どう直したらいいのか分からないが、とにかく何かが足りないと編集長が言っている」と、作者としてどうしたらいいか分からない通告をされた。
作画の加藤山羊と相談し、もうここで企画を通すのは難しそうだ、と意見がまとまった。そこで出版社の方に「また別の企画ができたらお願いします」と別れを告げ、そのまま企画書を別の出版社に持ち込んだ。するとその出版社の編集者の方から、「うちの雑誌ではこの企画は通らないけど、こういう部分を直せば良くなると思う」と具体的なアドバイスをもらえた。
編集者の方がくれたアドバイスは、「緊張感が持続しない」、「主人公に感情移入しにくい」というものだった。そこで本来なら一話ごとに区切りを入れる連作的な形式だったのを、完全に続き物の話にした。それから主人公がただ恐怖に巻き込まれていくというエピソードを根本から違うものに変え、主人公が中心になって物語を動かしていく流れにした。そのプロットを、WEBコミックサイトの《作品募集》のフォームから送ってみたのだ。結果、連載作品としての一次審査を通り、打ち合わせしてもらえることになったのである。
今日の打ち合わせが二次審査の面談という形だったのだが、審査と言うよりは条件をすり合わせるのが目的という感じで、原稿料や連載の間隔、一話毎のページ数などを伝えられる。合わせてプロットの修正箇所の指示をもらい、作画の加藤山羊と相談して、この条件でOKなら契約する、ということになった。
午後、打ち合わせから帰宅してすぐ加藤山羊と打ち合わせし、編集部の方から出た条件でやれそうだ、との返事だったので、その旨をすぐ担当の方にメールする。2年前に起ち上げた企画が、紆余曲折を経て当初とは全く違うストーリー(だけど今の方が確実に面白くて怖い)になって、連載を始める一歩手前まで来れたことに感慨を覚える。

女囚霊 塀の中の殺戮ゲーム (ビッグコミックススペシャル)

女囚霊 塀の中の殺戮ゲーム (ビッグコミックススペシャル)

『女囚霊』以来の大好きな長編ホラーを書けることが本当に嬉しい。
十回以上もリテイクが続き、担当さんから「どう直したらいいのか分からない」と告げられた時は絶望的な気持ちになったが、とにかく形にすることを諦めずに、前に進んできて良かった。この仕事をしてきて思うのだが、大概のことは、諦めなければいつかどうにかなるような気がする。
本が売れなくても、帯がなくても、腐らず諦めず、これからも前を向いて努力を続けていこうと思います。