やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』電子版発売

本日、矢樹純のデビュー作である『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』の電子版が、電子書籍専門の出版社であるアドレナライズより発売されました。

いじめを娯楽とする因習の残る、青森県のP集落――。その集落のかごめ山と呼ばれる山の中にある縁切り寺を訪れた主人公の《矢樹純》が、心理カウンセラーを名乗る《桜木静流》とともに、首なし死体や足跡のない雪の上の焼死体など、不可解な状況で起きた連続殺人事件の謎に立ち向かう長編ミステリーです。

Amazonの他、楽天ブックスブックウォーカーなど、各ストアでダウンロード可能です。

books.rakuten.co.jp

bookwalker.jp

自分は10年前の2012年8月に小説家としてデビューしたのですが、こちらのデビュー作はすでに絶版となり、電子版も出ていませんでした。
なので『夫の骨』などの短編集で矢樹純を知った新しい読者の方には、デビュー作を読んでいただく手段がなかったのです。

インタビューなどでも何度かお話ししていることですが、自分はデビュー作が売れず、続編である2作目をデビューした版元から出すことができませんでした。そのため、デビュー後の何年かは、Kindleでの個人出版で作品を発表していました。

しかしそれらの小説を紙の書籍として出版し、より多くの方に届けることを諦めきれず、著者エージェント会社のアップルシード・エージェンシーに相談しました。そしてようやく、強迫性貯蔵症の少女が心理カウンセラーの桜木とともに孤島の療養所を訪れ、首なし殺人事件の謎を解く桜木シリーズ2作目の『がらくた少女と人喰い煙突』、そして表題作が第73回日本推理作家協会賞短編部門を受賞することになる『夫の骨』を世に出すことができたのです。

このたび、小説家デビュー10周年を迎えるにあたって、担当エージェントの栂井さんから、デビュー作を電子版として出版することを提案いただきました。
デビュー作はもう手に入らないのかというお問い合わせをいただくことも多く(Amazonなどで中古品は出品されているのですが定価より高いのです)、なんとかならないものかと感じていたので、とても嬉しいお話でした。

出版にあたってはストーリーや構成を大きく直すことはしませんでしたが、伝わりにくい記述や現在と合わない表現などを加筆修正しています。そして電子版に寄せて、著者あとがきも追加収録いたしました。

『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』は、改めて読み返しても、デビュー作でよくこれをやったと自分を褒めたくなるような仕掛けが施され、読んだ人を楽しませたいという思いの丈が詰め込まれた素晴らしい作品でした。

デビュー時からとても気に入っている、こちらの素敵なカバーイラストの使用を許可してくださった藤丘よう子様。著者校正の膨大な細かい赤字を反映してくださったアドレナライズの井手邦俊様。そして出版の提案をしてくださった栂井理恵様。本当にありがとうございました。

デビューから10年目の今、自信を持ってお届けします。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。