やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

破傷風とバナナ

ieyagi2006-01-03

夜、野良ヤギに「父がバナナを食べているのを見たことがあるか」と質問される。覚えていないと答えると、野良ヤギは「たってるんだよ」と言った。
全く意味が分からず、「どういうこと?」と聞いたら野良ヤギはまた「だから、たってるんだって」と同じことを言い、自分はなぜかとてもイライラして、野良ヤギを殴りたいような気持ちになった。
「たっている」の意味をよく考え、「断っている」ということだと気付く。「何で?」と聞いたら、野良ヤギは自分が知らなかった父の秘密を教えてくれた。
父は中学生の頃、破傷風になって入院した。生死に関わるような状態だったらしい。その時父の母は大好きだったバナナを断って、息子の回復を祈ったのだそうだ。あとになってその話を聞いた父は、「母が死ぬまで自分もバナナは食べない」とバナナを断っているのである。
父のことが少し、怖くなった。