やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

2回目の内見

不動産屋から物件資料を貰って、実際に見てみたい物件があったので担当者に連絡を取った。違う不動産屋の扱っている物件も混ざっていたのだが、不動産屋同士が連携しているようで「他社の広告のものでも構いませんから」と言われた。
今回は先週案内してもらったKさんの会社とは違う不動産屋。担当者はNさんと言った。やたら人当たりの良い「営業」という感じの男である。雨の中、2時半頃に迎えに来て貰い、息子と娘と牛人間と4人でNさんの運転する車で出掛ける。案内を頼んだ物件は2箇所だったのだが、「他にもお客様のご要望に合いそうな物件がありますのでご案内させて頂きます」とのこと。乳児と幼児がいるので長時間はキツイと考えて2箇所だけ、と段取りしたのが台無しである。不動産屋の営業車の中でオムツを替えたり授乳したりと大変な思いをしたが、物件はなるべくたくさん見るべきなので、あれはあれで良かったのかもしれない。とりあえずポジティブに考えていこう。

まずは自分達が案内を頼んだ新築3階建て、4LDK、2980万円。4棟分譲していてA棟とD棟が残っている、と資料にはあったが、それがまだ建っていないんだそうだ。とりあえず外観だけ見て次に行く。申し込みがあってから建てるのだと言うが、それを建売住宅として広告出すのって確か違法じゃなかっただろうか(先日読んだ『買っていい家わるい家。』にそう書いていた気がする)。Nさんの会社に対して不信感を抱くが、Nさんはとてもいい人っぽく、「まさかこんないい人が悪徳不動産屋のはずがない」と思い込もうとする。

次は新築3階建て、3180万円の3LDK。3LDKと言っても3階が12帖で、間仕切り家具で2部屋に出来る。駐車場(家が崖の下に建っているので宙に浮いた状態になる)はこれから作るので大きさも好きに出来るらしい。良い物件だが予算オーバーだし、収納が少ないのも嫌だった。牛人間が異常に物を捨てないタイプなので収納は必須である。

次は2階建てだけど階段で高さを変えながら部屋が独立した感じになっている新築物件。ここは案内を頼んであった。変わった間取りだが、狭くて傾いた土地を有効活用したのだろう。価格は3090万円。4LDK。カーポートも2台分あるがそこに至るまでの道は車がすれ違えないくらい狭い。しかもその道以外に道が無い。内装が所々剥がれていたりで、大工と内装屋は別なのかもしれないが雑な仕事だなーという印象。土地がきちんと造成されてなくて部分的に急な傾斜なので、土が落ちてこないように庭が高さ2メートルのコンクリートで囲ってある。そんな日当たりの悪い1帖の庭をどう使ったらいいのだろうか。

最後は3280万円の新築4LDK。完全に予算オーバーだが、ここがこのNさんの一番のお勧めである、ということが雰囲気で伝わってきた。営業部門を持っていないメーカーが建てたもので、広告などにお金を掛けない分価格を抑えてあるんだそうだ。造りはしっかりしていて間取りもシンプルで使いやすい良い家、という感じ。北西向きの角地。しかしカーポートが狭く、車とバイクの両方は無理かもしれない。

その後、やっと家に帰れると思ったらNさんの会社に連れ込まれる。ローンを組んだら月々どれくらいの返済額になるか、という見積書を出してくれるのだそうだ。別に買うと決めた訳でもないのにありがた迷惑だが、不動産屋に物件の案内を頼むと仕上げとして最後にこういう「数字を出す」ということをしてくれる。書き忘れたが先週のKさんもそうだった。

Nさんの会社には、Nさんの上司のIさんが待ち構えていた。顔つきも話し方も完全に“やり手”な男で、こいつが人のいいNさんを操って自分達に高い家を買わせようとしているに違いない、と感じた。

実はNさんには元々、予算は3000万円だと伝えてあった。その際Nさんに「参考までにご年収(もちろん自分ではなく牛人間の)はいくらですか?」と聞かれ、馬鹿正直に教えてしまったのである。牛人間の年収は、3000万円の家なら何とか無理をせずローンを返していける程度なのだが、Nさんの上司であるIさんは「無理すればもっと高い家が買えるだろう」と読んだのだろう。さすがやり手である。が、客の要望を完全無視するのはいかがなものか。

5時過ぎくらいには帰れるものと思っていたのに7時過ぎ帰宅。雨は止んでいた。夕食にかしわうどんを素早く作って食べて風呂入って息子と娘を寝せ、牛人間と家について検討する。やっぱり新築は高いので、中古をリフォームして住むのが身の丈に合っているのではないか、という結論になった。

牛人間が今住んでいる団地の近くに広くて良い中古物件があった、と言う。調べてみると築13年の4LDKで価格が2480万円。しかし2世帯住宅として使っていたらしく台所が2箇所あり、さらに風呂が狭い。大掛かりなリフォームをしないと住めなそうだ。自分はなぜか感覚的にこの家が気に入らず止めておこう、と言ったが、牛人間はなぜかこの家をやたらと気に入って「風呂なんか狭くてもいいし台所が2箇所あったら便利じゃない?」と引き下がらなかった(※この台所が2箇所ある家については後々凄い展開になるので覚えておいて欲しい)。

自分は気に入らなかったが牛人間があまりしつこく言うので一応不動産屋に問い合わせてみたところ、この家は売れてしまっていた。牛人間は「やっぱり良い家は早く無くなるんだよ」とガッカリしていた。先週最後に見た中古物件(老夫婦が住んでいた築10年の家)も、今日になって「あれは結構良かったのでは?」と思ってKさんに問い合わせたら買い手が付いてしまったとのこと。人間の移動の激しいこの時期は、不動産を手に入れるには素早い決断が大切なのだと分かった。