やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

鬼のラーメン

時々行く古本屋の隣に、いつ見ても人が並んでいるラーメン屋があった。ラーメン屋の看板には『支那そばや』とある。あの“ラーメンの鬼”の佐野実の店も『支那そばや』だったが、ラーメン屋としてはよくある名前のように思え、特に佐野とは関係無いだろうと考えていた。
今日、古本屋で本を買ったあと、牛人間が「ここ、いつも人が並んでるけど、今はあんまり並んでないし入ってみよう」と言い出した。昼食には時間がちょっと早めだったので、タイミングが良かったのだろう。子供と一緒に食べられるようなテーブル席があるか、確認するため近付いて店内を覗いてみると、店の壁には「子連れの方は、子供を騒がせないでください」という貼り紙が何枚もベタベタ貼られていた。間違いなく佐野の店である。
子供を騒がせない自信は無かったが、食べている人の様子を見ると普通におしゃべりしていて、そんなに厳しくはなさそうだったので思い切って入った。するとカウンターの中に、よりによって佐野実本人がいた。何で今日に限ってこの支店にいるのか。
ラーメンは旨かったが、佐野実に追い出されたらどうしようとビクビクしながら食べた。実際子供達はそこそこ騒いでいたのだが、そのおしゃべりの内容が「このラーメン、とってもおいしいねー」という可愛気のあるものだったおかげか、最後まで無事に食べ切ることが出来た。