やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

こんなことになっていますというご報告

6時15分起床。晴れ時々雨。今日から幼稚園なので久し振りに弁当を作る。子供達を起こして朝食、洗濯のあと、それぞれ学校と幼稚園に送り出してホラーの漫画原作のプロットを書く。
先月から何度かこのブログで書いている件で、今日、出版社の人が説明をしてくれることになっていた。11時前に仕事を切り上げて待ち合わせ場所に向かう。
まず何が起きたかについて書いておく。
※9/21追記:出版社から「具体的な数字に関しては出版社と著者の間での契約内容を公開することになるので伏せて欲しい」と要望がありました。その点については説明を受け、納得しましたので削除します。
自分はこれまで《加藤山羊》というユニット名で漫画原作の仕事をし、小学館から2冊の単行本を出している。そして最近になって、別の名義である出版社から本を出した。そちらは自分が今まで書いたことのない分野の作品で、新人賞に出して落選したものを親切にも編集部が拾い上げて形にしてくれたのである。
これまで小学館でのコミックスの出版に際しては、本の発売前に出版契約書が送られてきて、それに署名捺印してから発売日を迎えるという流れだった。今度の出版社からは発売前には契約書が届かなかったのだが、出版社によっては本の発売後に出版契約を結ぶこともあると聞いたので、それについては特に問い合わせることはしなかった。そして本が発売されて3週間ほど経った頃、出版社から「今回出した本の印税率は■%に決まった。契約書を送るので捺印して返送して欲しい」というメールが届いた。
一般的にも知られていることだと思うが著者印税は10%が通例で、本のジャンルなどによって8%程度になることもあるようだが、■%という数字は聞いたことが無かった。それと普通なら価格設定の段階で部数などを考慮して印税率が決まっているはずなので、発売後に印税率が決まったと言われたのも、意味がよく分からなかった。
今回の本の印税率が■%というだけでも自分としては一大事なのだが、更に心配なことに、本の出版に当たって自分はこの出版社と「今後、本作を含む▲冊までは他社で出版しない」という専属契約を結んでいた。印税率■%でこれから▲冊も書き下ろしの本を出していくというのはコストパフォーマンスが悪過ぎる。と言うか死ぬ。
出版社に電話して「マジですか」と問い合わせたところ、今回の■%もマジだし、2作目以降も「売れる作家になれば印税率が上がることもあるが■%のままのこともある」ということでマジだった。どうしてそんな大切なことを出版を決めたり専属契約を結ぶ前に教えてくれなかったのかと尋ねると、それについては申し訳なかったと普通に謝られた。
※9/21追記:印税率の連絡時期が出版後となったことについては、編集部から改めて謝罪を頂きました。もっと早い段階で知らせることが可能だそうで、今後はこのようなことは起こらないと思います。
とりあえずこの状況では出版契約は結べないと言うと、担当さんと担当さんの上司と、落選した自分の作品を出版可能なレベルになるまで何度も読んで指導してくれたアドバイザーの方が、わざわざ3人で出向いて説明してくれることになった。それが今日のことだったのだ。
この問題が持ち上がってから、お付き合いのある編集さんや作家さんなど色々な方に相談し、意見を聞いてみた。他の出版社の同じ種類の本を出す部署で働く編集さんのお話では、■%という数字は聞いたことが無く、またやむを得ず印税率が10%を下回る場合は必ず事前に作家の確認を取るもので、出版してからそんな低い数字を後出しすることはありえない、とのことだった。初めて仕事をする分野なので、文句を言っているこちらがおかしいのかもという不安があったのだが、自分の主張は妥当なようだ。
そして今日の出版社の人からの説明だが、まず「どうして■%という印税率を発売後に知ることになったのか」という疑問について。
この出版社では印税率の決め方が他社とは異なっているそうだ。先に売れやすい価格を設定してしまい、更に取次からの注文状況をギリギリまで見た上で部数を決め、そして最後に印税率を決めるという流れで、最後まで印税率が何%になるか分からないので、発売前にはっきりした数字を伝えることが出来なかった、という返事だった。
それと「作家に印税率を■%しか払わないと決めたのはどういう信念があってのことか」というのも気になったので聞いてみたのだが、自分のような受賞も出来ない文章書きは作家ではなくアマチュアであり(これはその通りです)、また本を出してプロになってからもそれが売れないようなら出版社が赤字になってまで本を出す義理は無いので■%の印税で耐えてもらうしかない、という答えだった。新人のデビュー作など売れるかどうか分からない本を出す時、出版社は赤字になるリスクを負って著者印税10%を確保した上で価格と部数を決めていたりするのだが、この出版社では赤字になるような見積もりはしないということらしい。経営者として全く正しい判断なので、株主の人は安心して株を持っていればいいと思う。
そういう訳で印税率■%という数字は理解出来たのだが、その数字で今後も仕事がしていけるか、と言うとそれは絶対に無理なので、専属契約について相談させてもらった。契約の覚書には「こちらで出版しないと決めた作品は他社で出して構わない」とあり、出版前に印税率で折り合いがつかなければ、それは出版しないという結論になるので他社に持ち込めるとのことだった。受賞歴も実績も無い作家が他社に持ち込んだところで本にしてもらえるのかは分からないが、印税率■%の本を必ず出さなければいけない訳ではないようなので安心した。
他社で本を出すために削除して欲しい条項があったのでまだ出版契約は結んでいないが、この本に関しては■%の印税率で契約することになると思う。重版分については●%の印税になるので売れれば何の問題も無いのかもしれないが、実際自分の本は売れていないし、これから売れるという確証も無いのでこうして身を守るために必死になっているのだ。だが疑問だった部分には今日、率直な説明をしてもらえたので、あとはもう目の前の仕事に集中しようと思う。
帰宅して昼食にカップ麺を食べて、ホラーのプロットの続きを書く。14時半、書き上がったものを担当さんにメールし、ちょうど帰って来た息子を連れて皮膚科へ。4個だけ出た水いぼを取ってもらう。今回、息子が「遊ぶ約束してるから麻酔テープ無しでやって」(麻酔が効くまで30分掛かる)と言うので麻酔無しで処置してもらった。テープを貼った時と同じ程度しか痛くなかったそうでそれは良かったのだが、看護師さんに「本当にいいんですか? ちゃんと保険効きますよ」と何度も確認されて都合が悪かった。
帰ってすぐ息子は友達と遊びに行ったので、加藤缶に電話して出版社とのことを話す。それと「あいの…」のネームの修正点について話し合う。16時に延長保育を頼んでいた次女を迎えに行き、その後は『倒錯の帰結』を読んでいた。
夕食は餃子のたねが残っていたのを包んで焼いて食べる。子供達を風呂に入れて寝せたあと、夫とも今日のことを話し、『倒錯の帰結』を読み終わって0時就寝。