やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

ミステリー短編集『かけがえのないあなた』発売

矢樹純の最新作となるミステリー短編集『かけがえのないあなた』を、Kindleストアにて発売いたしました。
出版の経緯を前置きさせていただきますと、自分は昨年、ある出版社でミステリーの短編集の企画のために、《月に1本の短編ミステリーを書く。それを10本溜まるまで続ける》という修業の日々を送っていました。それで、ついに10本溜まったのでその中から使える数本を選ぼう、ということになったのですが、担当さんから「連作でない短編集の場合は、登場人物の関係性や舞台設定などがなるべくバラバラの方がいい」と指摘されました。
そして少しでも似ている要素があるものを排除していた結果、残った短編は3本だけ、という大変厳しい結果となりました。考えなしに書いた自分が悪いのですが、この本数では短編集にならないので、さらに2本追加して書いて、うち1本は他に設定が近い話があるからボツ(←書いてる時点でどうして気づかないのでしょうね)、もう1本は返事待ちの状態です。
で、自分の手元には短編集には入れられない短編が8本もある、という状況になりました。
堂々と言い訳させてもらいますが、どの作品も、面白くないからボツになったのではなく、他の作品と似ている部分があるから、という理由でボツになったのです。
例えば状況や登場人物は違うけど、どちらも《監禁》のシチュエーションが使われているとか、どちらも犬が出てくるとか、どちらも姉妹の話であるとか(「家族」がテーマの短編集なので登場人物の関係性のバリエーションがそもそも限られているのです)、そういうネタ被りが原因で、結構な労力を注いで書いた作品が、なんと半分以上もボツになってしまいました。
これらがずっと誰にも読まれずにパソコンに保存されているのは悲しい、ということで、とりあえず『カクヨム』のコンテストに応募して無料公開してみました。しかし、地味で後味の悪いミステリー短編集は皆さんあまりお好きでなかったのか、ランキングの下の方に沈んだまま、わずかな方に読まれただけに終わりました。そしてコンテストの一次に落ちた時点で、ひっそりと作品を非公開に戻しました。
それからまた半年ほど、これらの作品は誰にも読まれずにパソコンに保存されていた(というか作者も存在を忘れていた)のですが、年末から絶え間なく押し寄せていた仕事の波が少し落ち着いてきて時間に余裕ができたので、この隙に久しぶりにまた個人出版をしてみよう、と考え、このような形で世に出させていただくこととなりました。価格については、長編ミステリーの『がらくた少女と人喰い煙突』が300円
或る集落の●

或る集落の●

ホラー短編を4編収録した『或る集落の●(まる)』が250円ということで、ミステリー短編が8編なら何円に設定すべきか悩んだのですが、中途半端な価格だと買いにくいかもしれないし、今後また個人出版をする機会があった時に考えるのが面倒なので、矢樹純の作品についてはシンプルに、長編は全て300円、短編集は250円とさせていただきます。
どれも1話が原稿用紙50枚程度なので、短編集としてはかなりのボリューム(通常は5〜6話くらい)だと思います。それがたったの250円ですから、大変お買い得です。
価格の安さを強調したところで内容について説明させていただきますが、さきほど書きました通り、こちらの短編集は《家族》をテーマとした短編ミステリーを集めたものです。
家族の隠された秘密や不審な行動に主人公が翻弄され、追い詰められていく、というサスペンス要素もありますが、それでいてすべての作品にきちんと《トリック》があります。そこはミステリー好きとしてこだわらせていただきました。
以下、Amazonの作品ページからの引用ですが、収録作品を簡単に紹介します。
●父の法要に現れなかった妹。そしてその夜、「私」はいつも冷静な母の異様な行動を目にする(「鼠の家」)
●実家を出て東京で一人暮らしをしている「私」は、妹と妹の婚約者に、ある疑念を抱いていた(「ひずんだ鏡」)
●孫から助けを求められた「私」は、一緒に暮らす娘の目を盗んで大金を振り込もうとするが……(「柔らかな背」)
●大切な一人娘が、裏山に出かけたまま帰らなかった。「私」は無事を信じながらも、半年前の事件を思い起こす(「裏山」)
●姉のマンションに居候する「私」は、姉にはどうしても言えない秘密を抱えていた(「朽ちない花」)
●夫の暴力に耐えかねた「私」は友人の山荘の管理人となる。だが静かな生活に突然《災厄》が訪れた(「虚ろの檻」)
●中学生の「私」は、ある変わった少女と友達になる。しかし彼女のついたおかしな嘘に巻き込まれ……(「嘘つきと犬」)
●農家の嫁となった「私」は、特別な扱いを受ける美しい兄嫁に言い知れぬ違和感を覚えていた。そしてついに事件が……(「三年目の帰還」)
以上の8編です。パッと見ると、なかなかバラエティに富んだ作品集に感じられると思うのですが、いかがでしょうか(しかし読んでみると、「ああ、この設定とこの設定が被っちゃったのね」ということがお分かりいただけるかと思います)
短編集ですので、お忙しい方でも空いた時間に少しずつ読んでいただけます。また、短編ではありますが一編一編がかなり濃いので、「短編集って長編に比べてなんか物足りなくない?」という方にも、充分ご満足いただけると思います。
決して後味の悪い話ばかりでなく、すっきりするようなお話もありますし、後味の悪い話にしても単なる《イヤミス》にならないよう、真面目な短編推理小説を目指しました。
ミステリーが好きな方には、きっと気に入っていただけるはずです。また、ミステリーにさほど興味のない方にも、サスペンスやヒューマンドラマとして楽しんでいただけると思います。
8編収録で250円とお手頃な価格でダウンロードできますので、ぜひ多くの方に読んでもらえたらと思います。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。