やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

校正とか漫画とか

新カテゴリー。仕事について書いて行きたい。
来月から校正の仕事を再開することになった。娘が生まれたりでバタバタしていたので長期の休みを貰っていて、こんなに長く休んだらクビになるんじゃないかと思いながら会社に連絡を取ったら「仕事件数が激増してるのに人が全然足りなくて物凄く大変なので本当に助かります。でも小さい子供さんがいるんだから無理しないでくださいね」と言われた。無理しなくていいのか。
主婦がSOHOの詐欺に遭っていると聞く。試験に合格すれば在宅で出来て高収入の仕事を回すなどと言われて教材を買わされるやつだ。子供を育てながら在宅で仕事をしたいという人は大勢いるのだろう。自分の収入は決して高くないが、こうして仕事を貰えるのはありがたいことだ。
自分の場合、スーパーの店員だった自分より牛人間の方が収入があからさまに高く、またお互いの実家が離れていて子育てに親の手を借りることが無理なので、結婚が決まった時点で自分がスーパーを辞めて在宅の仕事を探すことが決まっていた。保育園に預ければ外で働くことも出来るのだが、子供の病気などいざという時に頼るところが無いというのは不安だった。
スーパーで働きながら通信教育で校正の資格を取り、在宅勤務希望で色んな出版社の試験や面接を受けたが全部落ちた。資格を取った専門学校では「この資格を取ればすぐ第一線で働ける」と言っていたが、結局経験の無い人間には仕事は回って来ない(自分に大した能力が無かったせいもあるが)。スーパーの店員時代に掛けていた雇用保険も切れ、牛人間に何でもいいから働けと言われたので携帯電話を売ったり工場でフィリピン人と一緒にお歳暮の箱詰めをしたりした。何でこういう底辺系の仕事ばかりなのか。
在宅で校正の仕事をするには出版社に一度勤めてコネで仕事を回して貰うのが早道だと知り、底辺バイトをしながら華やかなマスコミのバイトも探していた。何社か受けて落ちた上で、ようやく今仕事を貰っている会社に潜り込み2年近く勤務。子供が生まれたので一旦辞め、その後は在宅の仕事を回して貰っている。雇用ではなく業務委託というやつなので不安定な身分ではあるが、希望通り在宅で働いているのだから不満は無い。
で、年に2〜3回しか載らないのでとても仕事とは呼べないのだが、こちらも一応在宅の仕事として、作画者の野良ヤギhttp://d.hatena.ne.jp/norayagi/と組んで漫画の原作をしている。これまでに掲載が5回。連載経験は無い。底辺である。今思うと出版社への営業の掛け方がかなり間違っていて、自分の作風や実力を無視して大手にばかり持ち込んでいた。
現在、自分達の面倒を見てくれている担当編集者はMさんという女性だ。とても仕事熱心で優秀な人である。そしてサディストだ。こっちが子供が生まれる直前であっても子供が生まれた直後であってもイケてない作品には容赦なくリテイクを要求する。そして「大変な時期なのに、お体は大丈夫ですか?」などと気遣いをしてくれる。ツボを心得ている。自分はこういうタイプにハマる傾向があり、Mさんの言うことには何でも従いたい。
自分の書く話はいつも物凄い勢いでMさんのリテイクを食らうのだが、これまで自分は「何がダメなのか」という根本的なことを理解せず、部分的にMさんの言ったとおりに直すという頭の悪いことを繰り返していた。ある時Mさんは「加藤さんの話は小説的なんです。漫画なんだから漫画的な話を書かないと」とアドバイスをくれて、「そうですか」と返事をしながらも自分は漫画的とはどういうことなのかが分かっていなかった。これはとても重要なアドバイスで、自分は理解出来なかったが、野良ヤギはこのアドバイスを一発で理解出来たらしい。野良ヤギは、これを馬鹿にも分かるように丁寧に説明してくれた。
漫画的な作品とは「明確なテーマがある」とか「読む人を選ばない」とか「絵で見せる」とか様々な要素があって、今酔っているから全部書くのは面倒なので止めておくが、それらを意識して話を作ると確かに“漫画っぽい”ストーリーとなり、しかもこれまでに比べて格段に楽に話が出来るのだ。自分はわざわざ苦労して、無駄に小難しくて万人受けしない、そしてネームが多くて読みにくい“小説っぽい”ストーリーを書いていたのである。
今、新たに営業を始めたところだが、漫画っぽくなった自分のストーリーが出版社に受け入れて貰えると良いなあと思う。



何だかとても長い話になった挙句に唐突に終わるが、酔っ払っていて眠くなってきたところなので、そういうことで。

これくらい飲みました。