矢樹純の最新作、ミステリー短編集『妻は忘れない』が10/28(水)に新潮文庫にて発売されます。
こちらは「夫の骨」の日本推理作家協会賞短編部門受賞後第一作となる作品です。
受賞の報告の際にも書きましたが、自分はデビュー作が売れなかったために次作を出すことができず、その後は出す当てのない状況で小説を書いていました。
『夫の骨』に収録された作品も、最後に書き下ろした一編以外はすべて、その時期に書いた短編です。
普通の作家なら、誰にも頼まれずに書くのはデビュー作だけで、二作目からは出版社に頼まれて書く作品になるのではないかと思います。
しかし自分は二作目の『がらくた少女と人喰い煙突』も、三作目の『夫の骨』も、誰にも頼まれずに書くことになりました。
ですが四作目にして、とうとう、ついに、頼まれたのです。
それも新潮文庫という、あのスピンのついた憧れのレーベルから。
「作家はデビュー後の二作目が勝負」という話を、何かで読んだことがあります。
デビュー後にどこからも原稿の依頼がなかったという状況で言えば、自分にとってはこの四作目が、まさに勝負する作品になると思いました。
そして何より、四作目の依頼をいただけたのは、『夫の骨』が祥伝社さんや書評家の方、書店員の皆さん、読者の方々など、たくさんの方の応援のおかげで、多くの方に届いたからです。
その恩に報いるような、なおかつ作家としての勝負作となるような、自分に書ける精いっぱいの面白い作品にしようと力を込めて書きました。
そんな作品を名誉ある賞の受賞第一作として出せるのが、本当にありがたく、嬉しいです。
この作品もまた多くの方に届いて、楽しんで、そして怖がっていただけるように願います。