やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

(※出産編)そして2年前と同じように

2年前と同じように夫のセリフを無視し、「病室にデジカメ忘れたから取って来て」と頼む。陣痛の時に夫が側にいるとイライラするので、なるべくなら生まれる寸前まで離れていて欲しかった。夫が出て行った隙に内診して貰うと、子宮口は6cm。急にお産が進んできた。
私はお産の後半になると急激なスピードで子宮口が開いていくタイプなのか、2年前は子宮口が6cmになったと思ったらあっという間に全開になってしまい、早朝だったこともあって赤ちゃんの頭が出たと同時に先生が到着するという異常事態が起こった。今回は夕方のお産で先生は病院にいるのだから間に合わないということは無いと思うが、一応看護師に前回のお産の状況を伝え、「先生は呼んだらすぐ来れるんですよね?」と確認する。看護師は「大丈夫だと思うけど、外来にまだ患者さんが3人いて、診察の途中みたい。ちょっと電話してみるね」と言った。物凄く不安になってきた。夫が戻ってきたので看護師の話を伝えると、「そっかー。あ、生む前の君を記念に撮っておくからね」と言って分娩台の上の私にカメラを向けた。さすが世界一の夫である。
陣痛はもう、時計を見る余裕すら無いので何分おきかは分からないが、ほとんど休む暇も無く次の波が来る、という感じで痛みの強さも半端じゃなかった。呼吸法が通用せず、途中で思わず力が入ってしまう。そんな私を看護師は「ダメダメ!力入れないで深呼吸!」と叱る。陣痛が来ていない敵のくせに。
力を入れちゃいけない理由が“赤ちゃんが圧迫されちゃうから”なら納得出来る。しかしこの時、私がいきむのを禁止されてた理由が単に、“先生がまだ来ていないから”だったのは間違いない。なぜなら、その叱られている時には子宮口は全開になっており、赤ちゃんは産道を通り抜けている最中だったからだ(←2年前にも同じような文章書いたなあ)。
結局先生が到着したのは赤ちゃんの頭が出てくる十数秒前で、今回も私は誰にも「いきんでいいよ」と言われることなく出産した。生まれた時間は午後6時32分。赤ちゃんは出て来てすぐに元気に泣き出した。3172gの女の子である。体を拭いて貰い、私が抱いたあと、夫も抱いた。赤ちゃんの顔は2年前に生まれた長女にクローンのように似ていて、初めて会った気がしなかった。
前回のお産では切開をする暇も無かったので赤ちゃんが出てきた時に出口が裂け、それを縫うのが非常に痛かったのだが、今回は同じような状況で生んだのに全く傷が出来なかった。看護師は「やっぱり3人目だと伸びがいいんだねー」とか言っていたが、きっと赤ちゃんがとても上手に出て来たせいだろう。そう思いたい。それからこの“会陰が裂けなかった”という話を後日、よりによって私の両親と夫の両親が全員揃った席で喜ばしいこととして語った夫については、もう何と言って良いのか分からない。