やぎのくらし

小説家で漫画原作者の矢樹純のブログ

子宮口が閉じる

夫と父に、入院することになったと病室から電話する。ここの病院は珍しいことに携帯電話の使用がOKなのだ。さらにここの病院は立ち会い出産が出来る分娩室なので、夫は会社を早退して新幹線でこっちに向かうと言う。間に合わないかもしれないが一応、ということらしい。
その後、お腹にモニターを付けて横になり、張り具合や赤ちゃんの様子などをチェックする。横になって安静にしていると、さっきまで頻繁だったお腹の張りが嘘のように治まっていった。何となく不穏な雰囲気を感じ始める。モニターが終わり、昼休みが終わった医者に再度内診をしてもらうと、医者は「子宮口は1〜2cmしか開いていないので、お産にはまだ掛かるでしょうね」と言った。
開いていた子宮口が閉じる、ということがあるのだろうか。とてもギモンだったがそんなことを口にしてお産の時にわざと痛くされたら嫌なので言えなかった。病室に戻ってぼんやりと困っていると母が様子を見に来る。仕事を早退してくれたらしい。陣痛が止んでしまった、と告げると、精神病院で看護師をしている母は「入院するかどうかの判断を医者じゃなく看護師がするなんてありえない」と病院の対応を厳しく批判した。
母と話をしているところに夫からメールが来る。今新幹線に乗っていて、夜の8時にこっちに着きそうだとのこと。子宮口が閉じた(?)おかげで夫も立ち会い出産に間に合いそうだし、まあいいか、と思い掛けたところ、夫からとんでもないことを知らされる。夫の両親が、明日の朝にこっちに着く便の飛行機を予約したと言うのだ。
無事に健康な子供が産まれて来るとは限らないのだし、まして明日の朝に産まれているかどうか分からないのに、飛行機とホテル(日帰り出来る距離ではない)の予約までして夫の両親が来てしまうというのは嫁としてかなりプレッシャーだ。しかも夫には「あなたのご両親には子供が無事に産まれてから報告して」と頼んでいたのに。
メールで「どういうこと?」と夫を非難すると、「産まれるのが間に合わなくても適当に観光しながら待つって言ってるから気にしなくていいよ」と、何も分かっていない呑気な返信が来た。
その後は病室で持ってきた本を読んで過ごしたが、きちんとした陣痛は始まることははかった。